地唄「流しの枝」のお稽古を始めました。 行き暮れて木の下影を宿とせば空に知られぬ雪ぞ散る 花の枕に吹雪のしとねにくや嵐のあてことを聞いて流しの花の枝 ほんに男の気ばかり汲んで一夜まる寝の添い臥しに言わぬが言うにいや勝る花や今宵の主ならまし Hauta “Branches on the Flow” “Overtaken by darkness, I slept underneath the tree, then I realized that it was snowing. With a pillow of flower petals and a bedding of snow, now a storm is setting on as if it is mocking me, which I let it pass with flowery branches.Continue reading “「流しの枝」”
Category Archives: 歌詞 Lyrics
Stay home
ウイルスのために、色々なお商売が自粛せざるを得ない状況ですが、わたしのお稽古場も、連休明けまではお休みにさせていただいています。 舞の会なども軒並みキャンセル、延期になりましたので、お家で過ごす時間が増えました。 こんな年も、庭の姫卯木が、例年より少し早めではありますが、花を咲かせてくれています。 Because of the virus situation, many businesses are being closed, same as my classes which are off until the end of the Golden Week Holiday vacation. Performances are also being cancelled or postponed, so I stay home much of my time. Even this kind of year had the deutzia (Himeutsugi in Japanese,Continue reading “Stay home”
常磐津 山姥
すべての女性は、心のどこかで山姥にあこがれるのではないでしょうか? 山を廻って天地山水と一体となり、人から疎まれつつも、かわいい金太郎を背負って、大人物に育て上げる・・・ 作品としては、世阿弥による能の「山姥」(やまうば)が中世に完成し、近松門左衛門が、同じ題材を用いて、1712年に浄瑠璃「嫗山姥」(こもちやまうば)を創作しました。 常磐津「山姥」、実は正派若柳流では、師範試験の選択曲の一つです。 「妄執の雲の、塵(ちり)積って、山姥となれり、山又山に山巡りして、行方も知れずなりにけり」(常磐津「山姥」より歌詞抜粋) (写真は今朝の雪景色) 今年の十月に、わたしはこの師範試験を受けさせていただく予定です。 邪正一如の山姥の境地にたどりつくことができるとは思いませんが、与えていただいた機会に感謝して、一生懸命舞わせていただきたいと思います。 〔歌詞〕 よしあし曵きの山廻り 四季の詠めも色々に 浮き立つ空の弥生山 桃が笑えば桜がひぞる 柳は風のおうように 誰を待つやら小手招く 霞の帯の辛気らし 締めて手と手の盆踊り ななこの池に移り気の うらみ過ごしの梶の葉は 露の玉章落ち初めて 焦れて濡らす露の袖の梅 ついだまされて室咲の 梅の暦もいち早く 門に松たちゃナンナつい雛も 出るかと思えば沓手鳥 菖蒲ふく間に盆の月 待つ宵過ぎて菊の宴 はや祝い月里神楽 ほんに ほんにせわしき浮き世も我も 白雪積もる山廻り 山廻り いとま申して帰る山の 峰も梢も白砂は 源氏の栄え尽きしなき まもる神がきは妄執の雲の 塵積もって山姥となれり 山又山に山廻りして 行方も知れずなりにけり [English Translation] I wonder if all the women, in their heart, somehow adore YAMANBA, or a Mountain Woman, a prototype of a lady who lives in the mountains. She runs freely overContinue reading “常磐津 山姥”
地歌舞 雪
少し先ですが、12月の「縁の会」の稽古がはじまりました。演目は、「地唄 雪」。 「花も雪も 払えば清き袂かな ほんに昔の昔のことよ 我待つ人も吾を待ちけん 鴛鴦(おし)の雄鳥(おどり)に物思ひ羽の 凍る衾(ふすま)に鳴く音もさぞな さなきだに 心も遠き夜半の鐘 聞くも淋しき独り寝の 枕に響くあられの音も もしやといっそせきかねて 落つる涙の氷柱より 辛き命は惜しからねども 恋しき人は罪ふかく 思はぬことの悲しさに 捨てた憂き 捨てた浮世の山かづら」 藤原定家に、「見渡せば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ」という歌がありますが、なんとなく、それを思い起こさせる名曲です。花も雪も、浮世のこと、といなして、打ち払って、みずからは山間に消えて行ってしまうような。 最後の「山かづら」は、もともとは山野に生える蔓性の植物ですが、そこから、夜明けごろに山の端にかかる雲をさすようになりました。ここでは、その意味で、冒頭の花、雪と響き合います。 この作品の持つ雰囲気を大切に、舞わせていただけたらと思っています。
Sweet smell of the spring
a weeping plum tree in our mountain hut 長い冬を終えて、梅の花がほころびはじめました。今日ご紹介させていただく曲は、梅を描いた代表的な三味線音楽、端唄「梅にも春」。 「梅にも春」は、今はもう失われた、江戸の古き良き情緒を描き、わたしたちの心に郷愁をかき起こします。 歌詞: 梅にも春の色添えて、若水汲みか車井戸 音もせわしき鳥追いや、朝日に繁き人影を、もしやと思う恋の欲 遠音神楽や数取りの、待つ辻占や鼠鳴き、逢うて嬉しき酒機嫌 濃茶が出来たらあがりゃんせ、ささ持っといで After the long winter, plum blossoms are beginning to open… The piece that I would like to introduce today (of course, related with plum blossoms) is Ume-ni-mo-Haru, or “Spring to a Plum Blossom.” It is one of Hauta, a shorterContinue reading “Sweet smell of the spring”
Crane and Turtle 鶴亀
日本舞踊には、能からとられた曲が多いのですが、この鶴亀も、その一つです。 時は八世紀、中国は玄宗皇帝の御世です。四季の節会の最初の儀式に、皇帝は月宮殿におでましになり、長寿の象徴である鶴と亀に舞を舞わせられます。そののち、皇帝も自ら舞を舞い、宮殿に還御されます。 おめでたい雰囲気が特徴で、そのため、結婚式など慶事に踊られます。 歌詞 抜粋: それ青陽の春になれば 四季の節会の事始め 不老門にて日月の 光を君の叡覧にて 百官卿相袖を連ぬ その数一億百余人 拝をすすむる 万戸の声 一同に 拝するその音は 天に響きておびただし 千代のためしの数々に 何をひかまし姫小松 齢に比ふ丹頂の 鶴も羽袖をたをやかに 千代をかさねて舞遊ぶ みぎりにしげる呉竹の みどりの亀の 幾万代も池水に 棲めるも安き君が代を 仰ぎ奏でて鶴と亀 齢を授け奉れば 君も御感の余りにや 舞楽を奏して舞ひたまふ 山河草木国土豊かに 千代万代と舞ひたまへば 官人駕輿丁(かよちょう)御輿を早め 君の齢も長生殿に 君の齢も長生殿に 還御なるこそめでたけれ As Nihon Buyo or Japanese traditional dance developed through Noh drama, there are pieces that came directly from Noh. I would like to introduce Tsurukame, or “Crane and Turtle,” one of the piecesContinue reading “Crane and Turtle 鶴亀”
萩桔梗 Hagi Kikyo
今日、ご紹介させていただきたい歌は、季節柄、端歌「萩桔梗」です。 萩は、秋に赤紫の花房をつける、落葉低木。 桔梗は、秋に青紫の星型の花をつける草本植物。 この歌に、萩桔梗の花束を贈る中に、お手紙を忍ばせるシーンがあるんです。 夜毎にすだく松虫に、自らの恋心を重ね合わせる、秋らしい一曲です。 歌詞: 萩桔梗 中に玉章忍ばせて 月の野末に 草の露 君を松虫 夜毎にすだく 更けゆく鐘に雁の声 恋はこうしたものかいな There are a thousand pieces in Japanese traditional songs but I would like to introduce one piece tonight, it is called Hagi Kikyo, as this is seasonal now. Hagi or Japanese bush flowers blossom in autumn and it has littleContinue reading “萩桔梗 Hagi Kikyo ”
鐘ケ岬 Kane ga Misaki, or Cape of the Bell
Kiyohime by Kokei Kobayashi 今日、ご紹介させていただくのは、「鐘が岬」。あの有名な「道成寺」に題材を取った地歌舞です。 能の「道成寺」があまりに成功したため、この作品を元にして、歌舞伎の「娘道成寺」、浄瑠璃「道成寺」、そして琉球組踊の「執心鐘入」などが作られました。 「鐘が岬」は、歌舞伎役者の初世中村富十郎が、1753年江戸中村座で「京鹿子娘道成寺」を演じて当たりを取った後、大阪へ帰って1759年に「九州釣鐘岬」の大切(おおぎり)に再演したものが、そのまま舞踊の地が地歌に残ったものとされています。 そのベースとなったのは、安珍・清姫伝説。奥州白川より熊野に参詣に来た僧、安珍に執心した、安珍が宿を借りた真砂の庄司清次の娘、清姫が、裏切られた激怒のあまり蛇に変化し、道成寺で鐘ごと安珍を焼き殺すという内容です。 能の「道成寺」は、その後日譚で、道成寺の鐘供養に現われた白拍子が、舞を舞い歌を歌い、隙を見て梵鐘の中に飛び込みますが、祈祷によって持ちあがった鐘から現れ出たのは蛇の姿でした。僧侶の必死の祈りに川に入水します。 地歌舞「鐘が岬」では、道成寺の物語に託して、廓づくしと恋心が舞い上げられます。 この十月、大原は実光院にて開催させていただく「月と舞と琴と歌」にて、私はこの鐘ケ岬を舞わせていただく予定です。 清姫に身を重ねつつ、女性の情念とともに、そこからの解脱を志す強い思いをも、舞わせていただけたらと思います。 歌詞: 鐘に怨みは数々ござる 初夜の鐘をつく時は 諸行無常とひびくなり 後夜の鐘をつく時は 是生滅法とひびくなり 晨朝の響きには生滅々為 入相は寂滅為楽とひびけども 聞いて驚く人も無し われは五障の雲晴れて 真如の月を眺め明かさん 言はず語らず我が心 乱れし髪の乱るるも つれないは只移り気な どうでも男は悪性な 桜々とうたはれて 言うて袂のわけ二つ 勤めさへただうかうかと どうでも女子は悪性な 吾妻そだちは蓮葉なものじゃえ 恋のわけ里数へ数へりゃ 武士も道具を伏編笠で 張りと意気地の吉原 花の都は歌で和らぐ敷島原に 勤めする身は誰と伏見の墨染 煩悩菩提の撞木町より 浪花四筋に通ひ木辻の禿立ちから 室の早咲きそれがほんの色ぢゃ 一い二う三い四 夜露雪の日下の関路を ともにこの身を馴染みかさねて 中は円山ただまるかれと 思い染めたが縁じゃえ Today, I would like to introduce you to the background and story of a famous Japanese Traditional Dance called, Kane ga Misaki or Cape of the Bell. The story is based on a famous noh playContinue reading “鐘ケ岬 Kane ga Misaki, or Cape of the Bell ”