少し先ですが、12月の「縁の会」の稽古がはじまりました。演目は、「地唄 雪」。
「花も雪も 払えば清き袂かな ほんに昔の昔のことよ 我待つ人も吾を待ちけん 鴛鴦(おし)の雄鳥(おどり)に物思ひ羽の 凍る衾(ふすま)に鳴く音もさぞな さなきだに 心も遠き夜半の鐘 聞くも淋しき独り寝の 枕に響くあられの音も もしやといっそせきかねて 落つる涙の氷柱より 辛き命は惜しからねども 恋しき人は罪ふかく 思はぬことの悲しさに 捨てた憂き 捨てた浮世の山かづら」
藤原定家に、「見渡せば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ」という歌がありますが、なんとなく、それを思い起こさせる名曲です。花も雪も、浮世のこと、といなして、打ち払って、みずからは山間に消えて行ってしまうような。
最後の「山かづら」は、もともとは山野に生える蔓性の植物ですが、そこから、夜明けごろに山の端にかかる雲をさすようになりました。ここでは、その意味で、冒頭の花、雪と響き合います。
この作品の持つ雰囲気を大切に、舞わせていただけたらと思っています。